刑事15年、民事20年
2005年1月19日 今回の「相棒」(テレ朝)のテーマは簡単に言えば「時効」。多分。
詳しいストーリーはこちら↓で。
http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/story/
(第11話 「ありふれた殺人」を見てね)
20年前に人を殺しておきながら、時効成立を盾に取って「自分はもう犯罪者ではない」と嘯き、謝罪の意思を全く見せない男。その自首を知った被害者の両親は当然、「犯人は誰であるか」を知りたがる。けれど法律上、時効が成立した事件の犯人を、たとえ被害者の遺族にでも知らせることはできない。
教えてやりたいのはやまやまだが、なんとか遺族宅のチャイムを押す一歩手前で引き返した亀山刑事(以下、薫ちゃん)はしかし、その姿を遺族に見られてしまうという大失態。挙句の果てに当の犯人が殺害される。
薫ちゃんが遺族宅を訪れたことは既に警視庁内部でもバレており、アリバイもない遺族が真っ先に容疑者にあげられる。薫ちゃんの相棒・杉下警部(以下、右京さん)はその事態を指して「(薫ちゃんの)半端な同情心がこの事態を引き起こした」とお怒りに。以来、遺族は毎日警視庁を訪れ、犯人を教えてくれと懇願する。対応するのはいつも右京さん。遺族と顔を合わせる勇気がない薫ちゃんに「逃げるんですか?」と痛烈な批判を浴びせる。
とは言いながらも右京さんは、監察官が薫ちゃんに対する処分まで3日間の期限をこっそりくれたので、2人で遺族の容疑を晴らすために捜査に乗り出す。捜査線上に浮かび上がったのは、20年前の殺人事件がきっかけで交番勤務から刑事へと転身した二係の港刑事。被害者の母親が当時の事件直後、心痛のあまり自殺未遂を起こしたところを救った人でもあった。
その彼が20年前の事件の犯人を知って、被害者に謝罪するよう説得するため20年前の犯人宅に向かったということも明らかになり、死亡推定時刻からも最有力の容疑者扱いとなる。
刑事が20年前の殺人犯を殺害した犯人であることを公表する羽目になれば、連鎖的に遺族が20年前の犯人を知ることになる。失態に失態が重なるこの事態に刑事部の上層部は当然紛糾する。
しかし、今回の殺人の本当の犯人は港刑事ではなく、20年前の殺人犯の住むアパートの隣の部屋に現在住んでおり、その騒音に日々悩まされていた弁護士志望の青年であったのだった。
そして事件は、現職警察官による2つの不祥事とは全く関わりのない「ありふれた殺人」としての帰結を見る。
薫ちゃんと港刑事への処分は組織としては下さねばならないが、その処分が明るみに出ることによる社会的影響(だと思う)を憂慮した小野田警察庁官房室長は、港刑事を交番勤務に戻し、薫ちゃんは1ヶ月の減俸という処分を監察官に要求する。
そうして、警視庁の不祥事は外部に公表されることはなく、20年前の事件の被害者の遺族夫婦は、体調を崩していた妻が遂に翌日、退院の目処のない入院をするため、最後にどうか犯人を教えてくれと哀願する。
様々な思いを押し殺して「教えられません」と吐き出した薫ちゃん。その姿を見て、遺族夫婦は泣き崩れる。
「あなたが苦しんでいるのは、わかっている」
それでも知りたかった。自分らの子が誰に殺されたのか、何故殺されなければならなかったのか。
しかしもうそれを知ることは永遠にできなくなってしまった。
それでも遺族は今までもこの先も、永遠にそれを求め続けていく。彼らが知りたいことを知る手段が、永遠に閉ざされたということすら知ることを許されずに。
「僕たちは、あの姿を忘れてはいけない」
右京さんが見せたその表情は、悲しみであったか、怒りであったのか。
……というわけで、今回は恥ずかしながら最後のシーンでマジで泣けそうになった。かなり良かったです。加害者には時効は存在しても、被害者に時効は存在し得ないんだよね。当たり前だけど。法の理不尽さ、ある意味では「抜け穴」を突きつけられる思いでした。
良かったといえばストーリーも良かったんだけど、右京さん=水谷豊の表情の演技が、今回は今まで以上に印象的だった。突然激昂する右京さんもあれはあれでいいんだけど、爆発しそうな感情を視線で表現する右京さんのシーン。秀逸でしたね。
ところで、私は実は1st Season(現在は3rd Season)を見ていないので、その昔に小野田室長と右京さんの間に何があったのか全然知りません。しかし、今回の2人のやりとりを見ていると、やっぱこの2人の関係は隠微であったり男同士のエロティシズムみたいなもんが醸し出されてたりだなぁ、とか思ってしまった。最後の港刑事と薫ちゃんの処分の差で、小野田室長の思いっきり官僚的な辛辣さというか冷徹がより以上にあからさまに表現されたので、右京さんの静かなる反骨心が際立った感じ。
実際、警察という組織に属している以上、小野田室長の掌中で転がされる立場でしかないことを自覚していながらも、その頤使に甘んじる気はさらさらないという意思が、小野田室長との対峙で充分に窺えます。
内面で戦う男同士の間って意外と淫靡な空気が漂ったりすんだよね。
偏見ですけど。(笑)
いや淫靡って言葉も微妙に違うなあ。うーん、うまく言えない。やっぱり類義語辞典が欲しいかも。こういう時に語彙の貧弱さを思い知らされるのである。
しかし今回、「相棒」の大事な癒しキャラであるたまきさん(右京さんの元奥さん)が出てこなかったのが残念っ。(笑)
詳しいストーリーはこちら↓で。
http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/story/
(第11話 「ありふれた殺人」を見てね)
20年前に人を殺しておきながら、時効成立を盾に取って「自分はもう犯罪者ではない」と嘯き、謝罪の意思を全く見せない男。その自首を知った被害者の両親は当然、「犯人は誰であるか」を知りたがる。けれど法律上、時効が成立した事件の犯人を、たとえ被害者の遺族にでも知らせることはできない。
教えてやりたいのはやまやまだが、なんとか遺族宅のチャイムを押す一歩手前で引き返した亀山刑事(以下、薫ちゃん)はしかし、その姿を遺族に見られてしまうという大失態。挙句の果てに当の犯人が殺害される。
薫ちゃんが遺族宅を訪れたことは既に警視庁内部でもバレており、アリバイもない遺族が真っ先に容疑者にあげられる。薫ちゃんの相棒・杉下警部(以下、右京さん)はその事態を指して「(薫ちゃんの)半端な同情心がこの事態を引き起こした」とお怒りに。以来、遺族は毎日警視庁を訪れ、犯人を教えてくれと懇願する。対応するのはいつも右京さん。遺族と顔を合わせる勇気がない薫ちゃんに「逃げるんですか?」と痛烈な批判を浴びせる。
とは言いながらも右京さんは、監察官が薫ちゃんに対する処分まで3日間の期限をこっそりくれたので、2人で遺族の容疑を晴らすために捜査に乗り出す。捜査線上に浮かび上がったのは、20年前の殺人事件がきっかけで交番勤務から刑事へと転身した二係の港刑事。被害者の母親が当時の事件直後、心痛のあまり自殺未遂を起こしたところを救った人でもあった。
その彼が20年前の事件の犯人を知って、被害者に謝罪するよう説得するため20年前の犯人宅に向かったということも明らかになり、死亡推定時刻からも最有力の容疑者扱いとなる。
刑事が20年前の殺人犯を殺害した犯人であることを公表する羽目になれば、連鎖的に遺族が20年前の犯人を知ることになる。失態に失態が重なるこの事態に刑事部の上層部は当然紛糾する。
しかし、今回の殺人の本当の犯人は港刑事ではなく、20年前の殺人犯の住むアパートの隣の部屋に現在住んでおり、その騒音に日々悩まされていた弁護士志望の青年であったのだった。
そして事件は、現職警察官による2つの不祥事とは全く関わりのない「ありふれた殺人」としての帰結を見る。
薫ちゃんと港刑事への処分は組織としては下さねばならないが、その処分が明るみに出ることによる社会的影響(だと思う)を憂慮した小野田警察庁官房室長は、港刑事を交番勤務に戻し、薫ちゃんは1ヶ月の減俸という処分を監察官に要求する。
そうして、警視庁の不祥事は外部に公表されることはなく、20年前の事件の被害者の遺族夫婦は、体調を崩していた妻が遂に翌日、退院の目処のない入院をするため、最後にどうか犯人を教えてくれと哀願する。
様々な思いを押し殺して「教えられません」と吐き出した薫ちゃん。その姿を見て、遺族夫婦は泣き崩れる。
「あなたが苦しんでいるのは、わかっている」
それでも知りたかった。自分らの子が誰に殺されたのか、何故殺されなければならなかったのか。
しかしもうそれを知ることは永遠にできなくなってしまった。
それでも遺族は今までもこの先も、永遠にそれを求め続けていく。彼らが知りたいことを知る手段が、永遠に閉ざされたということすら知ることを許されずに。
「僕たちは、あの姿を忘れてはいけない」
右京さんが見せたその表情は、悲しみであったか、怒りであったのか。
……というわけで、今回は恥ずかしながら最後のシーンでマジで泣けそうになった。かなり良かったです。加害者には時効は存在しても、被害者に時効は存在し得ないんだよね。当たり前だけど。法の理不尽さ、ある意味では「抜け穴」を突きつけられる思いでした。
良かったといえばストーリーも良かったんだけど、右京さん=水谷豊の表情の演技が、今回は今まで以上に印象的だった。突然激昂する右京さんもあれはあれでいいんだけど、爆発しそうな感情を視線で表現する右京さんのシーン。秀逸でしたね。
ところで、私は実は1st Season(現在は3rd Season)を見ていないので、その昔に小野田室長と右京さんの間に何があったのか全然知りません。しかし、今回の2人のやりとりを見ていると、やっぱこの2人の関係は隠微であったり男同士のエロティシズムみたいなもんが醸し出されてたりだなぁ、とか思ってしまった。最後の港刑事と薫ちゃんの処分の差で、小野田室長の思いっきり官僚的な辛辣さというか冷徹がより以上にあからさまに表現されたので、右京さんの静かなる反骨心が際立った感じ。
実際、警察という組織に属している以上、小野田室長の掌中で転がされる立場でしかないことを自覚していながらも、その頤使に甘んじる気はさらさらないという意思が、小野田室長との対峙で充分に窺えます。
内面で戦う男同士の間って意外と淫靡な空気が漂ったりすんだよね。
偏見ですけど。(笑)
いや淫靡って言葉も微妙に違うなあ。うーん、うまく言えない。やっぱり類義語辞典が欲しいかも。こういう時に語彙の貧弱さを思い知らされるのである。
しかし今回、「相棒」の大事な癒しキャラであるたまきさん(右京さんの元奥さん)が出てこなかったのが残念っ。(笑)
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